
夏のおでかけ暑さ対策持ち物・冷却ウェア・車内の注意
前回の在宅編では、おうちの中の暑さ対策をまとめました。今回はその続き——外に出るときの話です。
夏に外へ出るのは、犬にとって家の中よりずっと負荷の高い時間です。日ざしがあり、地面が熱く、日陰がどこにあるか分からない。しかも、飼い主が「そろそろ帰ろうか」と決めるまで、犬は自分で切り上げることができません。

我が家には、8歳のボストンテリア・源(げん)がいます。鼻の短い短頭種で、体重は6.5kg、毛は黒。呼吸で熱を逃がすのが苦手なうえ、黒い毛は日ざしの熱を吸います。夏のおでかけは、いちばん気をつかう季節です。
この記事では、出かける前の判断/持ち物/冷却ウェアの選び方/車での移動/お出かけ先での過ごし方を、順番にまとめました。そして最後に、我が家の今年の夏を正直に書いています。早朝5時に源を起こして、玄関から一歩も動いてもらえなかった話です。
熱中症そのもののサインや応急処置は、こちらの記事にまとめています。夏のおでかけ前に、一度読んでおいていただけたら安心です。

🚶 犬の熱中症は「車の中」より 「散歩中」に起きている
夏の犬の事故というと、多くの人が思い浮かべるのは「車の中の置き去り」ではないでしょうか。
でも、調べてみると違いました。
日本気象協会が2019年に犬の飼い主325人に聞いた調査では、約4人に1人(24.3%)が「愛犬が熱中症になったことがある」と回答しています。そのときの状況でいちばん多かったのは——
| 熱中症になったときの状況 | 割合 |
|---|---|
| 日中、散歩している時 | 44.3% |
| 室内にいる時 | 29.1% |
ペット保険の請求データ(アニコム損保)でも、発生場所は「散歩中・ドッグラン」と「リビング」が多いと報告されています。そして、リスクの高い犬種として挙がっているのが、シーズー・パグ・フレンチブルドッグ・ボストンテリアといった短頭種。源は、まさにそこに当てはまります。
同じ傾向は、海外の大規模な研究でも確認されています。イギリスで90万頭を超える犬のカルテを調べた研究によると、熱中症のきっかけは4分の3が運動——散歩や遊びだったそうです。車内への閉じ込めは、5%ほどでした。

もちろん、車の置き去りが安全という意味ではありません(その怖さは、後半で数字を見ていきます)。ただ、こうして並べてみると、いちばん気をつけたいのは、毎日なんとなく出ている散歩やおでかけのほうなんですね。
🌡 外の暑さは、地面から来る

外の暑さ対策を考えるとき、いちばん大事なのは犬が感じている暑さは、人が感じている暑さと違うと知っておくことです。理由は2つあります。
① 犬は地面のすぐ上を歩いている
天気予報の気温は、地上から1.5mほどの高さで測った数字です。人の顔のあたりの温度、ということですね。でも犬の体は、地面から数十cmのところにあります。小型犬なら、なおさら地面すれすれです。
そして夏の日中、日ざしの当たるアスファルトの表面温度は60℃程度に達します。とくに熱を吸収しやすい黒いアスファルトでは、60℃を超えることもあるそうです。
天気予報の「30℃」は、犬が歩いている場所の暑さを表していない——そう考えたほうが安全です。

② 肉球はやけどをする
熱いのは体だけではありません。肉球のやけども夏に多いトラブルです。路面が50℃を超えるあたりから危険とされ、55℃以上では散歩を避けるべきだといわれます。熱い路面を歩き続けると水ぶくれになったり、皮がむけたりします。
見つけにくいのも厄介なところで、歩きたがらない・しきりに足をなめる・足を上げる、といった様子で初めて気づくことも少なくありません。
確かめ方はかんたんです。手の甲を地面に5秒あてる。「熱い」と感じたら、その地面を犬は裸足で歩くことになります。出発前のひと手間ですが、これが日中の散歩をやめる判断のいちばん分かりやすい基準になります。

日が落ちてからでも、地面はまだ熱いことがあります。
✅ 出かける前の3つの確認
夏の散歩でいちばん大きいのは、じつは持ち物や冷却グッズよりも、出かけるかどうか自体を判断することです。玄関を出る前に、3つだけ確かめてみてください。
1. 時間帯
夏は、日中を避けて早朝か、日が落ちてしばらく経った夜が基本です。ここで見落としがちなのが、アスファルトは日が沈んでもすぐには冷めないこと。昼のあいだに蓄えた熱が残っているので、「暗くなったから大丈夫」ではなく、地面をさわって確かめてください。
真夏の早朝は、地面が一日でいちばん冷えている時間帯です。熱中症の記事でも触れましたが、真夏は4〜5時台まで早めるのが安全です。
2. 気温と湿度
気温だけでなく、湿度もセットで見ます。犬はパンティング(ハァハァという呼吸)で水分を蒸発させて熱を逃がすので、湿度が高い日は、同じ気温でも体温を下げられません。
目安は熱中症の記事と同じです。おおむね25〜28℃で要注意、30℃以上は散歩を控える。湿度70%以上ならさらに慎重に。
そして、早朝に行く方にひとつだけ知っておいてほしいことがあります。明け方は、一日でいちばん湿度が高い時間帯です。
意外に思われるかもしれませんが、理由は単純です。空気が含める水蒸気の量は、気温が下がるほど少なくなります。だから空気中の水分そのものは変わらなくても、気温が下がる明け方は、湿度の数字だけが上がっていく。つまり早朝は、「気温は一日で最低・湿度は一日で最高」という時間帯なのです。
人にとっては、涼しくて気持ちのいい時間です。でも犬は、その涼しさを気温だけでは受け取れません。パンティングで体温を下げる仕組みは、湿度が高いほど効きにくくなるからです。気温が下がったからといって、犬にも涼しいとはかぎらない——早朝に出るときは、そう思っておくと安全です。
3. 熱中症警戒アラート
環境省と気象庁が出している熱中症警戒アラートは、暑さ指数(WBGT)が33以上と予測されたときに、前日17時と当日5時に発表されます。人向けの情報ですが、「今日は外に長くいてはいけない日」を判断する材料としてそのまま使えます。
さらに危険な日には、都道府県内のすべての地点でWBGT35以上が予測されたときに熱中症特別警戒アラートが出ます(前日14時発表)。この日は、おでかけの予定そのものを見直すレベルだと考えてください。
熱中症警戒アラート
- 基準
- WBGT 33以上
- 犬とのおでかけの目安
- 日中の外出は中止。散歩は早朝・夜のみ、短く
熱中症特別警戒アラート
- 基準
- 都道府県内の全地点でWBGT 35以上
- 犬とのおでかけの目安
- おでかけの予定自体を見直す
外でしかトイレができない子は
ここまで「行くかどうかを決める」と書いてきましたが、外でしか排泄できない子は、暑くても行かないわけにはいきません。その場合は、行く・行かないではなく、行き方で調整します。
- 用を足す目的と割り切って、できるだけ短く
- 気温だけでなく湿度も見て、時間を選ぶ
- 地面を選ぶ(土・芝生・日陰。舗装の照り返しを避ける)
- 帰宅後に息が整うまでの時間を見て、次の日の判断に使う
📲 暑さ指数を、通知で受け取る
アラートが出るのは暑さ指数33以上。ただ、そこまで待つのは、犬にはかなり遅いです。暑さ指数そのものは5段階に分かれていて、環境省はそれぞれに行動の目安をつけています。犬の場合をあわせて並べると、こうなります。
31以上(危険)
- 環境省が示す目安(人)
- 外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する
- 犬とのおでかけ(編集部の目安)
- 外に出さない。トイレのみ、最短で
28〜31(厳重警戒)
- 環境省が示す目安(人)
- 外出時は炎天下を避ける
- 犬とのおでかけ(編集部の目安)
- 日中は中止。早朝・夜に短く
25〜28(警戒)
- 環境省が示す目安(人)
- 運動時は定期的に充分な休息を
- 犬とのおでかけ(編集部の目安)
- 時間帯を選ぶ。地面を触って確認、休憩をこまめに
25未満(注意)
- 環境省が示す目安(人)
- 激しい運動時に危険性がある
- 犬とのおでかけ(編集部の目安)
- 通常どおり。それでも真夏日は地面をチェック
注目してほしいのは、31以上は人でも「外出はなるべく避ける」とされていることです。人の話でそれなら、地面のすぐ上を歩き、汗をかいて体温を下げることもできない犬にとっては、その手前がもう危ない、と考えるのが自然だと思います。犬用の公式基準はないので、右の列は人向け指針に犬の条件を重ねた、編集部の目安です。
通知は「25以上」に設定するのがおすすめ
LINEの配信設定では、通知を受け取る暑さ指数を21/25/28/31/33から選べます。犬と暮らしているなら、25以上(警戒)がちょうどいいと思います。33(アラート基準)では犬にはもう遅く、28でも通知が来た時点でかなり厳しい。逆に21にすると夏はほぼ毎日鳴るので、通知に慣れてしまいます。25なら「今日は時間帯を選ぼう」と思える段階で届きます。

今日お住まいの地域に出ているかは、環境省のサイトで確認できます。
- 熱中症警戒アラートの発表状況(環境省)
- 暑さ指数(WBGT)の実況・予測(環境省)… 地域・時間帯ごとの数字
そしてもうひとつ、通知で受け取る方法があります。毎朝サイトを見に行くのは、正直なかなか続きません。届くようにしてしまうほうが確実です。
- LINEで受け取る … LINE公式アカウント「環境省」を友だち追加し、トーク画面のメニューから「配信設定する」。地域と、通知してほしい暑さ指数の値を選べます
- メールで受け取る … 熱中症警戒アラート等のメール配信サービス
どちらも無料です(通信料は別)。夏のあいだだけでも設定しておくと、判断がぐっと楽になります。
🎒 夏のおでかけ持ち物リスト
判断のつぎは装備です。夏のおでかけで持っていくものを、役割ごとにまとめました。

必ず持つ
携帯用の水と給水ボトル
- 役割・選び方のポイント
- 最重要。ワンタッチで犬が直接飲めるボトル型が扱いやすい。「喉が渇いたら」ではなく、こまめに少しずつ
保冷剤+薄手のタオル
- 役割・選び方のポイント
- 保冷剤はタオルで包んで、首・脇の下・内もも(太い血管が通る場所)に短時間あてます。直接あてると低温やけどのおそれがあり、かじる子は誤飲にも注意
濡らして使う冷感タオル
- 役割・選び方のポイント
- 水に濡らして絞れば何度でも使える。応急の体冷やしにも、休憩時の下敷きにも
うんち袋・ウェットシート
- 役割・選び方のポイント
- 通年。夏はにおいが立ちやすいので、密閉できるタイプが快適
状況に応じて
クールベスト/ネッククーラー
- 役割・選び方のポイント
- 涼しい時間に出たうえでの“プラスα”。仕組みが3種類あり、効く条件が違うので、選び方は次の章で
いつも使っている水の器
- 役割・選び方のポイント
- 我が家は同じ素材でないと、あまり飲んでくれません。なので折りたたみボウルではなく、家で使っているステンレスのボウルをそのまま持っていきます。
日陰をつくるもの(携帯用の日よけ・抱っこ紐・カート)
- 役割・選び方のポイント
- 小型犬やシニア、短頭種は「歩かせない」選択肢を持っておくと安心
タオル(大きめ・乾いたもの)
- 役割・選び方のポイント
- 水遊びのあと、車のシート、緊急時の体拭き。1枚あると何かと助かります
覚えておく
「持ち物」ではありませんが、いちばん大事な準備がひとつあります。行き先の近くにある、夜間もみてもらえる動物病院を1軒スマホに入れておくことです。旅先や遠出では、かかりつけがすぐそばにありません。出発前に調べて連絡先を控えておけば、いざというときに病院を探すところから始めずにすみます。
🧊 冷却ウェアの選び方| 3タイプの違い
在宅編で「くわしくはお出かけ編で」とお伝えした、着せる・巻くタイプの冷却グッズです。じつは仕組みが3種類あって、それぞれ得意な状況がちがいます。この違いを知らないまま選ぶと、「思ったより涼しくないな」ということになりやすいんです。
濡らして着せるタイプ(気化熱)
- 仕組み
- しみこませた水が蒸発するときに、体の熱を持っていく
- 得意な場面
- 風のある日・乾いた日。長く効く
- 苦手な場面・注意
- 湿度が高いと蒸発しにくく、効きが落ちる。日本の真夏の昼は苦手。濡れたままにすると蒸れて皮膚トラブルに
保冷剤を入れるタイプ
- 仕組み
- 服のポケットに入れた保冷剤が、体を直接冷やす
- 得意な場面
- 短時間でしっかり冷やしたいとき。湿度に左右されない
- 苦手な場面・注意
- 保冷剤が溶けると終わり。冷えすぎ・低温やけどに注意。重い
着るだけのひんやり生地タイプ(接触冷感)
- 仕組み
- 触れた瞬間にひんやり感じる素材。水も保冷剤も使わない
- 得意な場面
- 軽い。日ざしよけを兼ねる
- 苦手な場面・注意
- 冷却力はいちばん弱く、あくまで補助
日本の夏は湿度が高いので、濡らして着せるタイプは「万能」ではないというのがいちばん大事なポイントです。湿度の高い日や風のない日は、保冷剤を入れるタイプを併用する、そもそも外出時間を短くする、といった判断が必要になります。
使うときの注意
- 濡れたままにしない … 濡らして着せるタイプは、帰宅後すぐ脱がせて体と被毛を乾かします。濡れっぱなしは、蒸れて皮膚トラブルのもとになります
- サイズは締めつけない … きつすぎると、呼吸や動きの妨げになります。とくに短頭種は、首まわりに余裕をもたせてあげてください
- 嫌がったら外す … 震える、動きが鈍くなる、体を丸める、といった様子は「冷えすぎ」か「不快」のサインです。我慢させないであげてください
- 着せたから安心、ではない … 冷却ウェアは、暑い時間帯に出るための装備ではありません。涼しい時間に出たうえでの“プラスα”です
我が家が使っているもの
源が着ているのは、接触冷感の生地に、背中のポケットへ保冷剤を入れられるタイプの服です。上の表でいえば、ひんやり生地タイプと保冷剤を入れるタイプの組み合わせ。実際に売られているものは、こうした複合型が多いです。あわせてネッククーラーも使っています。

保冷剤を入れているので、体が冷えすぎていないか、途中で背中を触って確かめるようにしています。同じ場所に当たり続けるので、そこだけは気をつけています。
🚗 車での移動| 「ちょっとだけ」が危ない理由
前半の研究では、車内の閉じ込めは熱中症全体の5%ほどでした。割合としては多くありません。ただ、車の中で起きる事故は取り返しがつかない形になりやすいという怖さがあります。

数字で見ると、はっきりします。JAFが真夏に行った実験では、外気温35℃のもとで窓を閉め切った黒い車の車内温度は、最高57℃、ダッシュボードは79℃に達しました。
| 条件(外気温35℃・4時間) | 車内の最高温度 |
|---|---|
| 黒い車・対策なし | 57℃ |
| 白い車・対策なし | 52℃ |
| サンシェードあり | 50℃ |
| 窓を3cm開ける | 45℃ |
| エアコン稼働 | 27℃ |
出典:JAF ユーザーテスト「真夏の車内温度」(2012年8月22〜23日実施)
注目したいのは、サンシェードでも窓開けでも、犬が耐えられる温度にはならないことです。JAFも「人や動物が耐えられない温度となり、車内温度の上昇を防ぐことはできない」と結論づけています。
エアコンを止めてからわずか15分で、熱中症指数が危険レベルに達したという結果も出ています。「エアコンをつけて涼しくしておいたから、5分だけ」——この5分が、15分になる可能性を考えると、答えはひとつです。
車でのおでかけ、守ること
- たとえ短時間でも、車に犬だけを残さない。買い物も、支払いも、トイレも。連れて降りるか、誰かが車に残るか
- 走行中も、犬のいる場所に日ざしが当たっていないか確認する。エアコンの冷気は前席に届きやすく、後席のクレートは思ったより涼しくありません
- 乗せる前に、車内を先に冷やしておく。停めていた車は、乗り込んだ瞬間が最も暑い状態です
- 駐車は日陰を選び、屋外の駐車場では戻る時間を短く
🌳 お出かけ先での過ごし方
着いてからも、暑さ対策は続きます。
日陰と休憩を、先に決めておく
犬は楽しいと止まりません。とくにドッグランでは、他の犬と遊ぶうれしさで、自分の限界を超えて走ってしまうことがあります。前半の研究が示すとおり、熱中症のきっかけの4分の3は運動です。
そこで、遊ぶ前に「休憩の場所と回数」を決めておくのがおすすめです。15〜20分遊んだら日陰で水を飲ませる、というように、犬まかせにせず、飼い主のタイマーで区切ります。

そして休憩は、必ず日陰で。「日陰のほうが涼しい」は当たり前に聞こえますが、地面の温度で見ると差は劇的です。環境省の資料によると、日向のアスファルトが60℃程度に達するのに対し、日除けの下の地表面温度は気温より2〜3℃高い程度にとどまります(「まちなかの暑さ対策ガイドライン 改訂版」p.31)。気温30℃の日なら、日向60℃に対して日陰は32〜33℃ということです。
犬の体は地面のすぐ上にあります。日陰に入るというのは、犬にとっては30℃近く涼しい場所へ移動するのと同じこと。木陰やテントの下を探す数十秒には、それだけの意味があります。
地面は、アスファルトだけではない
意外な落とし穴が、人工芝・ウッドデッキ・砂浜です。土や天然芝と違って熱をためやすく、夏の日中はアスファルトに近い温度になることがあります。「芝だから涼しいはず」と思い込まず、ここでも5秒チェックを。
水辺で気をつけたいこと
夏の水遊びは楽しい一方で、注意点があります。
- 海水を飲ませない … 塩分のとりすぎで、嘔吐や下痢、重いときは中毒になります。遊ぶ前と途中に、真水をしっかり飲ませておくのがコツです
- 遊びすぎで水を飲みすぎない … ボール遊びなどで大量の水を飲み込むと、体の塩分バランスが崩れることがあります。休憩をはさんで、続けて遊ばせすぎないようにしましょう
- 上がったあとは体を拭いて乾かす … 濡れたままだと蒸れて皮膚トラブルのもとに。海や川のあとは、真水で流してから乾かしましょう
引き返すサイン
CHECKおでかけ中は、次のサインが出たらその場で切り上げて、涼しい場所へ移動してください。
- 舌を大きく出した激しいパンティングが、休んでも戻らない
- よだれが大量に出る/泡立っている
- 歩くのを嫌がる、立ち止まる、伏せてしまう
- ふらつく、まっすぐ歩けない
- 歯ぐきや舌が、いつもより赤い(または白っぽい)
犬の平熱は人より高く、体温が上がりはじめてから悪化するまでが早いのが特徴です。「休ませれば戻るだろう」と様子を見るのではなく、まず涼しい場所へ移すことを優先してください。
帰ってからの呼吸で、次の日を決める
もうひとつ、我が家で見るようにしているものがあります。帰宅後、ハカハカがおさまるまでどのくらいかかるか。
散歩中は平気そうに見えても、帰ってから息が上がったままなら、その日その時間は、その子には暑すぎたということです。次の日は、もっと短く。もっと早い時間に。あるいは行かない。自分の子の体で測れる、いちばん確かな目安です。

💬 よくある質問
気温は下がりますが、アスファルトには昼間の熱が残っています。出る前に手の甲を地面に5秒あてて、熱ければ時間をずらすか、土や芝生のルートに変えてください。
できません。冷却ウェアは、涼しい時間帯に出たうえでの補助です。とくに、濡らして着せるタイプ(気化熱)は、湿度の高い日本の真夏の昼にはいちばん効きにくいタイプです。日中は、そもそも出ないのが対策になります。
大丈夫ではありません。JAFの実験では、窓を3cm開けても外気温35℃で車内は45℃まで上がりました。サンシェードでも50℃です。短時間でも、犬だけを車に残さないでください。
タオルで包んだうえで、首・脇の下・内ももに短時間あてます。太い血管が通っていて、効率よく冷やせる場所です。直接あてると低温やけどのおそれがあり、かじる子は誤飲にも注意してください。
早朝や夜に短く行けるなら、それがいちばんです。ただ、暑い時期に無理をして熱中症になるリスクのほうが大きいのも事実で、我が家は先生に「無理に今の季節は散歩に行かなくていい」と言われました(家の中でトイレができる子なので選べる、という前提つきです)。体重が気になるときは、散歩の量より先に食事の量を先生と相談するほうが安全です。そのうえで、家の中の遊びで、退屈しない時間をつくってあげてください。
🐾 編集部の夏|実は、 源は毎日は散歩に行けていません
ここまで、夏のおでかけの装備と判断を書いてきました。最後に、我が家の話をさせてください。
今年の夏は、行けなかった日のほうが多いくらいです。
源は家の中でトイレができる子です。外でしか排泄できない子には、そもそも難しい選択ですよね。ここから先は、その前提のうえでの我が家の話として読んでください。
早朝5時に起こしてみた結果
もちろん、最初から諦めていたわけではありません。地面がいちばん冷えている時間に、と思って、朝5時に眠っている源を起こして連れ出した日がありました。
結果は——玄関先から一歩も動きませんでした。(笑)
別の日には、出発できたこともあります。私の体感では、確かに涼しい朝でした。ところが、しばらく外にいて家に帰ると、源はハカハカと息を切らしていました。

ところが、涼しい夜には歩いた
一方で、こんな日もありました。
雨上がりの夜21時ごろ。気温も湿度も下がって、地面もしっかり冷えていた晩です。このとき源は、ご機嫌で歩きました。 早朝に玄関から動かなかったのが嘘のように。
念のため、タオルで包んだ保冷剤を下に仕込んだカートも一緒に連れて出ました。疲れたら乗せられるように。

「歩くのが嫌」ではなく、「暑い」だった
ここまでで、答えが見えてきました。
源は、家の中のおもちゃ遊びだと全力で走り回る子です。ボールを投げれば、何度でも駆けていきます。体力がないわけでも、動くのが嫌いなわけでもありません。
- 涼しい室内では、全力で走る
- 雨上がりの涼しい夜は、ご機嫌で歩く
- 早朝5時の外では歩かず、歩けた日も帰ると息が上がる
違いは体力でも気分でもなく、暑さでした。
前半に書いたとおり、地面は前日の熱が残っていて、明け方は一日でいちばん湿度が高い時間帯です。「気温が下がったから大丈夫」は、人の物差しだったということですね。逆に言えば、条件がそろえば歩いてくれる。行けない季節なのではなく、行ける日を選べばよかったのだと思います。
動物病院で言われたこと
体重が気になって、「最近ぜんぜんお散歩に行けていなくて……」と動物病院で打ち明けたとき、先生の答えはこうでした。
「無理に今の季節は散歩に行かなくていいですよ」
正直、ほっとしました。行けていないことに、ずっと後ろめたさがあったからです。
もちろん、源の犬種・年齢・体質をふまえて言ってくださったことなので、すべての子に当てはまる話ではありません。答えは、その子ごとに違います。 気になったら、かかりつけの先生に「今の季節、うちの子はどうしたらいいですか」と聞いてみてください。
🏠 行かない日を、どう過ごすか
歩かない日でも、犬は退屈します。我が家では、家の中でのおもちゃ遊びや、歩かせずにカートに乗せて外の空気を吸いに出る「ドライブ散歩」で、その時間をつくるようにしました。SNSで見かけたノーズワークも試して——盛大に失敗しました。

おうちの中の暑さ対策そのものは、在宅編に。エアコンの効かせ方や冷感グッズの選び方は、そちらをどうぞ。

📌 まとめ
夏のおでかけで大事なことは、たった4つです。
- 出るかどうかを、先に決める … 時間帯・気温と湿度・熱中症警戒アラート。地面には手の甲を5秒
- 装備は“プラスα”と考える … 水・保冷剤・冷却ウェア。装備があるから日中に出られる、ではありません
- 車には、短時間でも残さない … 外気35℃で車内57℃、エアコン停止15分で危険レベル
- 人の「涼しい」を、犬の物差しにしない … 早朝でも地面は冷めておらず、湿度は一日で最も高い時間帯。逆に、雨上がりの涼しい夜なら歩けることもあります。行けない季節ではなく、行ける日を選ぶと考えると気が楽です
そしてもうひとつ。犬は「もう帰ろう」と言えません。楽しそうにしているうちに、体には熱がたまっていきます。切り上げる判断は、いつも飼い主の側にある——夏のおでかけは、そこだけ覚えて帰っていただけたらうれしいです。

📚 出典・参考ツール
- Hall EJ, Carter AJ, O'Neill DG. “Dogs Don't Die Just in Hot Cars—Exertional Heat-Related Illness (Heatstroke) Is a Greater Threat to UK Dogs.” Animals (Basel). 2020;10(8):1324.
- 日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」熱ゼロ研究室|飼い主に聞いた「愛犬の熱中症」に関する調査(2019年7月・犬の飼い主325人)
- アニコム損害保険「みんなのどうぶつ手帳|ワンちゃんの熱中症発症状況」(保険金請求データ)
- JAF ユーザーテスト「真夏の車内温度」
- 環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン 改訂版」(平成30年3月)p.6・p.31
- 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症警戒情報とは」
- 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症特別警戒情報とは」
- 気象庁「最小湿度と実効湿度」(湿度は気温と逆に動く)
- 名古屋大学 宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ|気温の変化によって相対湿度は変わる?」
- ワンクォール(獣医師監修)「地面55℃以上は散歩ダメ!」