
犬が コーヒーや お茶を 舐めたらカフェインが 危ない 理由と、 すぐに する こと
コーヒーやお茶は、毎日テーブルの上にあるもの。ちょっと席を立ったすきに、カップに残ったカフェオレを舐めていた——そんな事故は、どの家でも起こりえます。
ぶどう、キシリトール、玉ねぎ、チョコレート、アボカドと続けてきたこのシリーズ、6つめはコーヒーとお茶です。チョコレートの記事で「コーヒーも同じ系統の成分で危険」と書いた、そのカフェインの話です。
もう舐めてしまった、という方は、先に4章「舐めた・飲んでしまったら」を読んでください。
🔬 なぜ危険なのか—— 人より 敏感で、 症状が 早く 出る
カフェインは、脳や心臓を刺激する成分です。体のなかの「休め」という合図を受け取る場所をふさいでしまうので、神経が興奮する、脈が速くなる、おしっこが増える、といったことが起こります。
そして犬は、人よりカフェインに敏感です。そのうえ体重あたりで考えると、60kgの人と5kgの犬が同じひと口を飲めば、体重あたりの量は12倍。人には何ともない量でも、犬には症状の出る量になってしまいます。
しかもカフェインは、胃腸からすばやく吸収されて全身に行きわたります。チョコレートの中毒が数時間遅れて出るのに比べて、症状が出はじめるのが早いのが特徴です。

⚖️ どの くらいで 危険?—— 「何を」飲んだかで 変わる
先に結論から書きます。カフェインに「これ以下なら安全」と言い切れるラインは示されていません。そのうえで、報告されている数字を見ていきます。体重1kgあたり約20mgで、吐く・下痢などの軽い症状が出始めます。チョコレートの記事で紹介したのと同じ目安で、カフェインとテオブロミンは合わせて数えます。
そして、この量に届くまでの早さは、飲みものの種類で大きく変わります。同じ「お茶」でも、玉露はせん茶の8倍です。
飲みもの / カフェインの目安
- せん茶・ほうじ茶・ウーロン茶
- 100mlあたり約20mg
- 紅茶
- 100mlあたり約30mg
- インスタントコーヒー
- 100mlあたり約57mg
- コーヒー
- 100mlあたり約60mg(せん茶の3倍)
- 玉露
- 100mlあたり約160mg(コーヒーの約2.7倍)
- エナジードリンク・眠気覚まし飲料
- 1本あたり約36〜150mg(製品で大きく違う)
- 抹茶(粉)
- 1gあたり約32mg(1杯分の1.5gで約48mg)
体重5kgの子の場合、症状が出始める量は約100mgです。玉露なら約60mlでこの量になります。エナジードリンクは、製品によっては1本飲むだけでこの量を超えます。

ただしこれは「ここまでは安全」という線ではありません。獣医学の教科書にも、カフェインへの感じやすさには個体差があると書かれています。体の小さい子、年をとった子、腎臓に持病のある子ほど、重くなりやすいとされています。だからこそ、量にかかわらず、あげない・届く場所に置かないを守ってあげてください。
⏱️ 症状と タイムライン—— 1〜2時間以内に 出ることが 多い
チョコレートの症状は多くが6〜12時間以内に出ますが、カフェインは多くの場合1〜2時間以内に出はじめます。

タイミング / 起こること
- 多くは1〜2時間以内
- そわそわ落ち着かない、うろうろ歩き回る・鳴く、吐く・下痢、ハアハアする、水をたくさん飲む、おしっこが増える
- 重い場合
- 脈が速い・乱れる、ふるえ、けいれん
- どのくらい続くか
- 数日続くことがある
「なんだか今日は落ち着かない」「ハアハアが止まらない」と感じたら、テーブルの上のカップや、ごみ箱のコーヒーかすを確かめてみてください。
🏥 舐めた・ 飲んでしまったら
結論から書きます。症状が出るのを待たず、すぐ動物病院に電話してください。夜間なら夜間救急に電話してください。
病院では、体に吸収される前に取り除く処置と、症状を抑える治療が中心になります。軽ければその日のうちに、重ければ数日の入院になることもあります。
電話の前に、次の3つをメモしておくと診察がスムーズです。
メモすること / 例
- 何を
- 「ブラックコーヒー」「玉露」「エナジードリンク」など。缶やパッケージが残っていれば持って行く
- どのくらい
- 「マグの底に残っていた分」「缶の半分」など、分かる範囲で
- いつ
- 「10分前」「出かける前に置いたままだった」など
☕ 見落としが ちな 「カフェインが入っているもの」

カフェインは、コーヒーカップの中だけにあるわけではありません。飲みもの以外にも、身近なところに入っています。

もの / 注意ポイント
- 飲み残しのコーヒー・カフェオレ・コーヒー牛乳
- ミルクで薄まって見えても、カフェインは元のコーヒーのぶん入っている
- コーヒー豆・粉・使ったあとのかす
- 淹れたあとのかすにもカフェインが残っている
- 緑茶・紅茶のティーバッグ(お茶パック)・茶葉
- 茶葉1gに約15〜35mg。熱いお湯で1回淹れても4割近くが残るので、使ったあとのティーバッグや茶殻にも入っている
- 抹茶アイス・抹茶ラテ・抹茶のお菓子
- 抹茶の粉は1gあたり約32mg。お菓子や飲みものの形でも、中身はカフェイン
- お茶漬け
- 市販のお茶漬けの素には抹茶入りのものがあり、お茶をかければそのお茶のカフェインも加わる。塩分も多い
- エナジードリンク
- 1本で36〜150mgと、製品による差が大きい
- コーラ
- 500mlのボトル1本で約65mg
- カフェイン錠(眠気防止薬)
- 1〜2錠で、小型犬の命に関わることがある
- 市販の風邪薬・頭痛薬の一部
- カフェインを含む製品がある。箱の成分表示で確かめられる
- コーヒーゼリー・コーヒー味のアイス・チョコがけのコーヒー豆
- お菓子の形でも中身はカフェイン。コーヒーゼリーはコーヒーから作るので、カフェインが入っている。チョコがけならテオブロミンも加わる
🏠 事故を 防ぐには
カフェインの事故は、飲んでいる途中で席を立ったときに起こりやすいもの。防ぎ方は、毎日の置き方の習慣です。
- 飲みかけのカップをローテーブルやソファの脇に置いたまま離れない。立つときは持って行くか、犬の届かない高さに置く
- 缶やペットボトルは、飲み終えたらすぐ片づける
- コーヒーのかす・茶葉・ティーバッグはフタつきのごみ箱に捨てる
- 眠気防止薬や風邪薬は、バッグの中や机の上ではなく扉の閉まる場所にしまう
- 家族や来客にも「コーヒーとお茶はダメ」を共有しておく

💬 よく ある 質問
自分で「これくらいなら大丈夫」と決めずに、動物病院に電話で相談してください。危なさは、飲んだものの種類と量、そしてその子の体重で大きく変わります。とくに玉露やエナジードリンク、カフェイン錠は、少しの量でもカフェインが多く入っています。電話では、何を・どのくらい・いつ飲んだかを伝えてください。
大丈夫とは言えません。市販のコーヒー牛乳やカフェオレは、製品によってカフェインの量が大きく違い、ブラックコーヒー(100mlあたり約60mg)より多く入っているものもあります。見た目では分かりません。飲んでしまったら、パッケージを手元に置いて、何を・どのくらい・いつ飲んだかを動物病院に電話で伝えてください。
コーヒーフレッシュの原材料は植物油脂や乳製品などで、コーヒーや茶葉は入っていません。ただ、脂肪が多く、犬は乳製品でお腹をこわしやすいので、あえてあげる理由はありません。吐く、下痢をするなどの様子が気になるときは、動物病院に相談してください。コーヒーに入れたあとのものを舐めたなら、コーヒーを舐めたのと同じです。自分で判断せずに、何を・どのくらい・いつ舐めたかを動物病院に電話で伝えてください。
カフェインレスのコーヒーも、カフェインがゼロになっているわけではありません。アメリカの獣医薬剤師の団体がまとめた資料でも、デカフェは危険な量の一覧に含まれています。カフェオレならミルクや砂糖も入っていて、お腹をこわすもとになります。あえてあげる理由はありません。
麦茶の原料は茶葉ではなく大麦なので、麦茶そのものにはカフェインは含まれていません。ただ、「麦茶」と名前がついていても、番茶などの茶葉をブレンドした商品があります。色がよく似たほうじ茶も茶葉から作られていて、カフェインが入っています。パッケージの原材料に「緑茶」「番茶」「ほうじ茶」などが入っていないか、確かめてみてください。とはいえ、犬の水分補給は、ふだんの新鮮なお水でじゅうぶんとれます。わざわざお茶を用意しなくても大丈夫です。
危険です。猫も犬と同じように人よりカフェインに敏感で、カフェイン錠1〜2錠で命を落とすことがあります。犬と猫、どちらのいる家庭でも「届く場所に置かない」は共通です。
📌 まとめ
- カフェインは脳と心臓を刺激する成分。犬は人よりカフェインに敏感で、人には何ともない量でも症状の出る量になる
- 体重1kgあたり約20mgで軽い症状。「これ以下なら安全」と言い切れるラインは示されていない
- 玉露はコーヒーの約2.7倍。エナジードリンクは製品によっては1本で、体重5kgの子に症状が出始める量(約100mg)を超える
- 症状は多くの場合1〜2時間以内に出て、数日続くこともある。落ち着きがない、吐く、ハアハアするなどの様子に気づいたらカップやかすを確かめる
- 舐めた・飲んでしまったら、症状を待たずにすぐ動物病院へ電話する。何を・どのくらい・いつをメモし、缶やパッケージを持って行く。自宅で吐かせるのは絶対NG
- コーヒーかす・茶葉・眠気防止薬・風邪薬にもカフェインは入っている。防ぐのは毎日の置き方の習慣
同じ系統の成分を含むチョコレートについては、こちらにまとめています。

📚 出典・ 参考
この記事は一般的な情報をまとめたもので、獣医師の診断・治療に代わるものではありません。誤食のときは、この記事に戻るより先に動物病院へ連絡してください。
- Merck Veterinary Manual「Chocolate Toxicosis in Animals」——テオブロミンとカフェインは胃腸からすばやく吸収され全身に広がる、アデノシン受容体を阻害して中枢神経の興奮・利尿・頻脈を起こす、20mg/kgで軽い症状(嘔吐・下痢・多飲)・40〜50mg/kgで心臓への影響・60mg/kg以上でけいれん、感受性に個体差がある、チョコレート中毒の症状は多くが6〜12時間以内に出る
- Gwaltney-Brant S「Chocolate intoxication」ASPCA Toxicology Brief——ASPCA動物中毒管理センターの経験では、テオブロミンとカフェインを合わせて20mg/kgで軽い症状、40〜50mg/kgで重い症状、60mg/kgでけいれん
- VCA Animal Hospitals「Caffeine Toxicity in Pets」(Pet Poison Helpline 獣医師執筆)——犬や猫は人よりカフェインに敏感、中毒の重さは量と体の大きさ・健康状態で決まり、体の小さい・年をとった・腎臓に持病のある犬ほど重くなりやすい、カフェインの原因になるもの(コーヒーかす、茶、エナジードリンク、市販の鎮痛薬・風邪薬、コーヒー味のアイス、チョコがけのコーヒー豆など)、症状、数時間以内に始まり数日続くことがある、カフェイン錠1〜2錠で小型犬や猫が死亡しうる、気づいた時点で連絡する、治療は除染と対症療法で軽症は日中・重症は数日の入院
- American College of Veterinary Pharmacists「Caffeine」——症状(嘔吐、下痢、ハアハア、多飲多尿、不整脈、ふるえ、けいれん)は摂取から1〜2時間以内に出る、カフェインレスのコーヒーも危険な量の一覧に含まれる
- Pet Poison Helpline「Caffeine」——犬や猫は人よりカフェインの影響に敏感なようだ
- 内閣府 食品安全委員会 ファクトシート「食品中のカフェイン」(2018年2月23日更新)——コーヒー60・インスタントコーヒー57・玉露160・紅茶30・せん茶20・ウーロン茶20mg/100ml、エナジードリンク・眠気覚まし用飲料は1本あたり36〜150mg、抹茶は3.2g/100g、フィンランド食品安全局の例としてコーラ500mlで約65mg、カナダ保健省の注意として一部の市販風邪薬・頭痛薬にもカフェインが含まれる
- 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「ほうじ茶 浸出液」——備考にカフェイン0.02g(100gあたり)。「番茶 浸出液」は0.01g。「麦茶 浸出液」の備考にはカフェインの記載がない
- 同「せん茶 茶」——備考にカフェイン2.3g(茶葉100gあたり)。「玉露 茶」3.5g、「ほうじ茶 茶」1.5g
- 坂本・中川・杉山・堀江(2002)「煎茶の1煎,2煎,3煎液の成分組成に基づく溶出特性」茶業研究報告 94——90℃・60秒の1煎目で茶葉のカフェインの約63%が溶出
- 森永乳業「栄養成分一覧 飲料」——マウントレーニア ディープエスプレッソ 240mlあたりカフェイン188mg
- 雪印メグミルク お客様センター「牛乳・乳飲料」——雪印コーヒー 200mlあたりカフェイン約10mg
- スジャータめいらく「スジャータP」——原材料は植物油脂、乳製品、砂糖、デキストリンなど
- 永谷園「お茶づけ海苔」——調味顆粒に抹茶、1袋(6g)あたり食塩相当量2.2g
- ASPCA「People Foods to Avoid Feeding Your Pets」——乳糖を分解する酵素が少なく、乳製品は下痢などの原因になる
- はくばく お客様相談室「麦茶にはカフェインが入っていますか?」——麦茶は大麦を原料とするため、茶葉を原料とする紅茶や緑茶と違いカフェインは含まれていない
- 千紀園「麦茶と日本茶の違い」——大麦をベースに京番茶をブレンドした麦茶の商品例(京番茶入黒豆麦茶)
- Pet Poison Helpline「Salt Is Toxic To Pets」——塩・塩水は塩中毒を起こす危険が高く、動物に吐かせる目的で使ってはならない



